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時を超えて響く映画を! 『シュガー・ラッシュ:オンライン』プロデューサーが語る(ぴあ映画生活)

(公開: 2018年12月24日)




[ 元の記事 ]
出典元: 『シュガー・ラッシュ:オンライン』

ディズニーの人気作の“その後”を描く新作アニメーション『シュガー・ラッシュ:オンライン』が明日から公開になる。本作では再びリッチー・ムーアが監督を、クラーク・スペンサーがプロデューサーを務めたが、制作はこれまで以上に困難の連続だったようだ。スペンサーはこう振り返る。「私たちは創作に着手するまではまったくわかっていなかったのです。映画の続編をつくることがこんなにも大変だということを」

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スペンサーはハーバード大学で学んだ後、1990年にウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオに入り、『リロ&スティッチ』や『ズートピア』など数多くの傑作を手がけてきた。彼がリッチ・ムーア監督とタッグを組んで2012年に製作したのが『シュガー・ラッシュ』でゲームセンターに置かれたアーケードゲームで暮らすキャラクター、ラルフとヴァネロペの冒険と友情のドラマが描かれた。

映画は世界中でヒットし、アニー賞では作品賞を含む5部門を受賞。ラルフとヴァネロペの新たな物語を描くことが決まったが、スペンサーは「私たちは創作に着手するまではまったくわかっていなかったのです。映画の続編をつくることがこんなにも大変だということを」と笑顔を見せる。「というのも、続編とは言っていますが、その映画だけで楽しめる独自性をもたせたいですし、キャラクターの魅力を引き継ぎながら進化もさせて、同時に観客をアッと驚かせたい。最終的には前作と同じかそれ以上に楽しんだり感動してもらいたいわけです。でもそれって……あまりにもハードルが高いんですよ(笑)。そんなことに気がついたのは実は創作を始めた後でした。作業しながら“おい、待てよ。これは大変なことなんじゃないか?”って(笑)。だからこそ私を含むスタッフ全員のモチベーションがあがりましたけどね」

しかし、ヤル気と情熱だけでは映画づくりは進まない。彼らは試行錯誤を繰り返し、これまでの名作が生まれた時と同じように膨大な数のアイデアを生み出しては捨て、納得がいくまでストーリーづくりに時間と労力を投じた。「プロジェクトの初期の段階から、今度の映画も“友情”を描いた物語になること、そして新作ではゲームセンターを飛び出して、インターネットの世界が舞台になることは決まっていました。そこで私たちは、ヴァネロペがインターネットの世界を発見して、ネットの世界では“Like(いいね!)”やハートマークがもらえることを知って、“いいね!”をもらう行為にハマってしまう物語を考えました。彼女はいつしか、他人が自分をどれぐらい評価しているか? で自分自身を定義してしまうようになるわけです」

スタジオでは監督やストーリー部門のアーティストたちが時間をかけて、この物語を深めていった。「ところが、この物語は時間をかけても良くならないんですよ。やがて私たちは、この物語にはふたつの問題があることに気づきました。ひとつめは、強くて、自分のことをよくわかっているヴァネロペが“いいね!”集めにハマるのは彼女らしくない、という問題でした。ふたつめの問題は、このストーリーだと警告的な話になりますから、観客はヴァネロペが間違ったことをしていると冒頭でわかっていて、彼女が自身の間違いに気づく瞬間を、観客はスクリーンを眺めながら“待つ”状態になってしまうことでした。これではストーリーが良くなるはずがありません。実は私たちはこのストーリーに1年半をかけていたのですが、ある時点でこのプランをすべて捨てることにしました」

そこでアーティストたちは改めてアイデアを出し合い、ヴァネロペが暮らすゲーム“シュガー・ラッシュ”の操作ハンドルが壊れてしまう冒頭を思いつく。彼女の暮らすゲーム機は古く、簡単には修理できないため、このまま行けばゲームごと廃棄処分になるだろう。しかし、どんなものでも揃うインターネット・オークションで“シュガー・ラッシュ”のハンドルパーツを落札できたとしたら? 「こうして、ヴァネロペとラルフがインターネットの世界に旅立つ話にしたわけです」

ふたりが訪れたインターネットの世界はカラフルな巨大都市で、世界中から人々が集まり、個性豊かなサイトが建ち並び、ゲームだけでなく人気映画やアニメーションのキャラクターも行き交う“何でもアリ”の空間だ。「監督のリッチー・ムーアはディズニー出身ではなくて、そもそもは『シンプソンズ』を作っていた人ですから、エッジの効いたコメディが得意なんです」。その結果、本作では『スター・ウォーズ』やマーベルのキャラクターがサイトを行き交い、ディズニー・プリンセスが揃ってヴァネロペの前に現れる“掟やぶり”の展開も登場する。「だからこそ私たちは、登場するプリンセスがオリジナルの描写に忠実であることをとても重視しました。オリジナルの声優さんに戻ってきていただいて、セリフや動きがそれぞれのキャラクターに忠実なものであるか意見をもらいました。ここに登場するキャラクターは長年に渡って人々に愛されてきたアイコン的な存在ですからね。徹底的に忠実に描き、その上で初めてキャラクターで遊ぶと言いますか、これまで観客が見たことのない“違う面”を描く。そうすることで観客のみなさんにニッコリしてもらったり、驚いてもらえると思ったわけです」

過激にも思えるアイデアと誠実な姿勢。これは「リッチー・ムーアが両方持ち合わせているもの」とスペンサーは分析する。「彼は普遍的で感動的なドラマを描くことも得意なんです。観る者の心を動かす物語は“ディズニー・アニメーションの定義”だと私は考えていますが、リッチーはエッジの効いたコメディを描くことも、心を動かす物語を描くこともできるわけです」。しかし、彼らは再び、創作の手を止めて自身に問いかけた。「インターネットの世界は日々進化を続けているけれど、映画製作中と公開時でネットの世界が変化してしまうことはないだろうか?とね。そこで私たちが導きだした結論は、物語を普遍的なものにすることでした」

『シュガー・ラッシュ』に登場する人気キャラクターもいつか忘れ去られてしまうかもしれない、本作で描かれるネットのサイトやツールがこの先、消えてしまうかもしれない。しかし、それは物事の“表面”しか見ていない。「毎年、冬の時期になるとアメリカでは『三十四丁目の奇跡』(1947年のアメリカ映画。クリスマス時期のニューヨークが舞台になっている)を観る人が増えます。あの映画で描かれている世界と現在を比較すると、人々の生活スタイルも、ニューヨークの街なみも、テクノロジーも大きく変化していますが、多くの人があの映画で描かれているストーリーに戻りたくなる。この映画もそんな風になってくれたらいいな、と思っていました」

そこで監督やスペンサーたちはさらにアイデアを重ねて、この映画に普遍的な“友情のドラマ”を描きこんだ。インターネットの世界を訪れたヴァネロペは刺激に満ちたネットの世界に魅了され、この場所ならば自分はもっと楽しく暮らせて、今まで以上に自分の能力を発揮できるかもしれないと思い始める。一方のラルフは穏かにすぎていく日常を愛していて、早くハンドルを落札して、故郷のゲームセンターに戻りたいと思っている。「ここにふたりの人物がいて、ふたりは友達で一緒に田舎から大都会に出たけど、片方が大都市の暮らしを好きになって、もう片方が故郷に帰りたくなった時、この友情はどうなるだろうか? あるいは子どもが成長して親元を離れて違う都市の大学に通うことになった時、親はどう反応するだろうか? ……この映画は舞台がインターネットではあるけれど、ここで描かれるドラマは50年経っても理解できるし、共感できるはずです」

インターネットの世界で繰り広げられる“何でもアリ”でワクワクする冒険と、本当の友情とは何かを真摯に見つめる感動的な物語。『シュガー・ラッシュ:オンライン』はこれまでのディズニー・アニメーション同様、時を超えて愛され続ける作品になりそうだ。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』
12月21日(金)より全国公開