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おとな向け週末映画ガイド 今週オススメしたい映画は、この4作品。(ぴあ)

(公開: 2019年09月05日)

[ 元の記事 ]
出典元: イラストレーション:高松啓二

今週末に公開の作品は14本。全国で拡大上映される『引っ越し大名!』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』と、ミニシアターなどで上映の11本です。その中から、おとなの映画ファンにオススメしたい作品をご紹介します。

●『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』
ぴあ(アプリ版)の名物企画「水先案内」で、エンタメ目利きのプロ、過去最多の11人が推している映画。鬼才クエンティン・タランティーノの新作です。

皆さん絶賛の理由は3つ。

まず、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピッドという超ビッグな俳優の初共演。ディカプリオはやや人気にかげりのあるTVのアクションスター、ブラピは彼と仲のいいスタントマンという役どころ。

つぎに、1969年8月のハリウッド、という時代と場所の面白さ。スティーブ・マックイーンやブルース・リーなどの当時のスター、映画スタジオ、映画館、街の風景の細かいところまで再現していて、これが映画ファンにとっては、たまりません。

そして、シャロン・テート事件の描かれ方。私もこの結末には驚きました。

これら全てを、映画オタクのタランティーノがいかに凝って作り上げたか、が最大の魅力です。上映時間が2時間41分と相変わらず長いのですが、あれもこれも好き放題入れたせいで。逆にそれが高評価の理由にもなっています。

●『やっぱり契約破棄していいですか!?』
やっぱりイギリスはブラック・ユーモアが冴える国です。ノルマに追われる殺し屋なんて、かつて「どうも雑用が多くて、いけねえ」とつぶやいた、われらが宍戸錠さん以来のおかしさです。

現代のロンドン。この映画に登場する殺し屋は、英国暗殺組合のベテラン会員なのですが、課せられたノルマの達成が困難になってきた今日このごろ。未達だと「卒業」せざるをえません。そこで考えついたのが、自殺の名所に行き、自殺志願者に声をかけ、その手伝いとして殺人契約を結び、目標を達成しようというアイデア。夜のチェルシー橋で、身投げをしようとする若者を見つけ、やっと契約にこぎつけます。若者は小説家志望だが人生に絶望、実に7回も自殺に失敗していたのです。にもかかわらず、この殺し屋と契約を交わしたとたん、運命が開けてきて、タイトルのようなことになってしまい……。

クールな殺し屋なんだけれど、定年間際のサラリーマン家庭のような日常、組合活動とか、研修も受けなきゃいけないし、雑用も多い。そのへんのギャップと、老いと若きの人生を賭けたドタバタがなんとも楽しいコメディです。

●『ガーンジー島の読書会の秘密』
第2次世界大戦中、イギリス海峡に浮かぶガーンジー島は、イギリスで唯一、ドイツの占領下にありました。家畜を没収され、外出にも制限が加えられたこの島で、住民は、密かに読書会を開いていたのです。戦後、この読書会の存在を知ったロンドンの作家が、彼らを取材し、『タイムズ』に記事を書こうと、島へ渡るのですが……。

戦争中にこの島で何がおきたのか? それを探る作家を演じるのはディズニー『シンデレラ』の主演、リリー・ジェームズ。彼女を探偵にしたロマンティック・ミステリーです。アメリカ人の裕福な恋人がいる彼女、読書会をめぐるいくつかの人間ドラマに接し、魅力的な人たちに出会うことで、気持ちに微妙な変化が出始めます。そして思わぬ展開が。

当時のファッションや、時代背景の描写、緑豊かな島ののどかな暮らしなど、アンティーク感も楽しめます。イギリスではおなじみの「フッシャーマンズセーター」、その元祖ともいえる「ガンジーセーター」はこの島から生まれたそうです。

●『おしえて!ドクター・ルース』
日本では知名度の低い人物ですが、アメリカにおいてはニューヨーク・タイムズに誕生日を祝う記事が載るほどの有名人。こういう人がいるんだ、と感動し、元気になれます。アメリカのメディアで活躍する、セックス・セラピスト、ドクター・ルースを描いたドキュメンタリーです。

90歳でエネルギッシュに世界を駆け回る彼女。話題になったのは1980年代のラジオ出演から。ニューヨークの独立局で始まった日曜深夜のトーク番組が、密かな人気を博しました。誰もが知りたいけれど、話すのをためらう、性の悩み。ルースおばさんが、ストレート、かつリアルな言葉でわかりやすく解決してくれたのです。ついに84年には全国ネットのテレビ番組に進出。140センチと小柄で、実に愛嬌のあるひょうきんな顔。テレビで人気になるのもうなずけます。

実はドイツ生まれのユダヤ人。波乱万丈とはこのこと。ホロコーストで家族を失い、イスラエルからアメリカへ流浪の人生を送ったつらい過去があります。パレスチナ時代に一時ついた仕事にも、驚きます。詳しくは、是非、映画館で。

特集上映では。
●「獅子文六 ハイカラ日和」(ラピュタ阿佐ヶ谷) 9/1~11/30
本屋さんの文庫本コーナーで、最近見かける小説家、獅子文六。戦後まもない頃のベストセラー作家で、作品はユーモア小説とよばれています。これがなぜかいま受けて、シリーズ累計25万部突破、だそうです。そういう人気作家ですから、当時絶頂期だった映画界も目をつけ、映画化された作品も多いのです。そんな獅子文六原作の、1950年代から60年代初頭に発表された14本が上映されます。

株屋の「ギューちゃん」を加東大介が演じた『大番』シリーズ4作。松竹・渋谷実監督の不思議なタイトル『てんやわんや』『やっさもっさ』と『自由学校』。チラシに使われた『特急にっぽん』は川島雄三監督作品で、原作のタイトルは『七時間半』。東京ー大阪を7時間半で結んだ特急こだまの食堂車を舞台にしたコメディです。

*編集部から
ご愛読いただいている「おとな向け週末映画ガイド」は9月から「おとな向け映画ガイド」として、掲載を毎週月曜日に変更させていただきます。次回掲載は、9月2日(月)です。よろしくお願いいたします。

文=坂口英明(ぴあ編集部)